オーストラリア・シドニー | オーストラリアに於ける日本

足長おじさんがあなたを精神的に経済的に支えます

2019年10月23日

あれはいつの頃だったか、確か2001年か2002年に私がワーホリだった頃。
某邦字媒体のクラシファイドに「〈足長おじさんの会〉駐在員があなたを精神的に経済的に支えます。20代の女性からの連絡を待っています。」というような募集記事が載っていたのを記憶しています。
本当に貧乏なワーホリだった私はすこしだけ魅力を感じつつ、「オーストラリアに来てまで援助交際してどうする。」と雑念を振り払ったものでした。

そのころの私にとって駐在の方々というのは遠い世界のエリート達のことであって、私の生活には何ら関わり合いがありませんでした。こんな足長おじさんの会を結成するくらいだからお金と人生経験は豊富なんだろうというイメージがふくらむばかり。

前回お約束したとおり、【駐在員のカテゴリー】を掘り下げたいと思っているのですが、正直なところシドニーに来てから5年ほど経つ今までの間に駐在員に出会ったのはたった1度しかなく、ワーホリ時代から今に至るまでずっと彼らの生活は私にとって謎となっています。
周囲の友人も口を揃えて「出会わないよねえ。」とのたまいます。

ちなみに駐在員とは何なのか。現地採用と駐在の違いを述べますと、例えば私の場合は**ランゲージセンターというオーストラリア資本の企業に採用され、オーストラリアの雇用法のもと、オーストラリアドルでお給料をもらい、オーストラリアに税金を納めています。住居はもちろん自分で手配し、通勤手当等も受け取っていません。
それに対して駐在は日本から派遣されてきているので、給与形態や福利厚生は日本の企業と同等になります。大企業の場合は、派遣する国によって、そこに海外手当や家賃補助、送迎車や運転手の手配を付与します。

つまりは同じ企業で働いていたとしても現地採用よりも駐在員の方がはるかに優遇されているのが現状です。駐在員は日本企業によって転勤を命じられてこちらに来ているため、オーストラリアでの生活はその企業によってほとんど保障されています。例えば瀟洒なアパートが会社によって提供されたり、通勤のための車が用意されたり。

一度だけ出会った某超一流企業の駐在員(28歳独身男性)に駐在生活の実情を伺ってみたところ、週ウン百ドルするハーバービュー付アパートに一人暮らし、車は会社からの支給、そして趣味はスポーツとクルージング。クルーザーを保有しているのです。ひょえ~と思いながら、お友達はどうやって作るのかと聞いてみると、来ました、来ました、「駐在の会」というものがやはり存在するようです。

駐在員という立場はきっとお友達を作りにくいものだと察します。仕事をするために海外に来るわけですから、学校にも通わず、いきなり仕事、仕事。重要な任務を抱えて日本からわざわざ派遣されているので職場では指導者的立場にいることは間違いないでしょう。それによって現地採用の人と気が合わないことも多々あるでしょうし、オーストラリアに長く住んでいる変わり者達といまいちしっくり来なかったりして。既婚者であれば家族も一緒に来ていることもあり、誰も知らない土地に連れてこられて寂しい思いをしている家族に週末はたっぷりサービスしなくてはいけないでしょう。そんなこんなでなかなかお友達を作るチャンスがなく、「駐在の会」で似たもの同士が杯を交わすことになるんでしょうね。

生息地:Milsons Point・Ryde・Rozelle・Balmain・Frenchs Forest等

出没地:炭の家・歌伊里・クレセント・日本クラブ・魚や・ゴルフ場・テニスコート等

 

【駐在員のカテゴリー】と【永住権保持者・ビジネスビザ保持者のカテゴリー】は残念ながらほとんど交わりがありません。足長おじさんの会のような名目によって【駐在員のカテゴリー】と【ワーホリ・語学学校生のカテゴリー】が交わることはときどきあるかもしれませんが、そのおつきあいが短期的であることをもともと計算してのことでしょうし、それを公にすることもないのであまり人の耳には入ってきません。

【永住権保持者・ビジネスビザ保持者のカテゴリー】は言わば叩き上げ。苦しい下積みの末、ようやくその立場を勝ち得た底意地があります。それに対して【駐在員のカテゴリー】は日本にいたときからエリート街道まっしぐら。ワーホリ貧乏生活や、英語学校へ通うというような苦労をしなくてもすらりと管理者の立場に抜擢されて叩き上げのスタッフを指導します。プライドはシドニータワーより高い。我々【永住権保持者・ビジネスビザ保持者のカテゴリー】はちょっと嫉みを感じてしまいますよねえ。

ちなみに例の某超一流企業の駐在員(28歳独身男性)に「駐在の奥様方」について尋ねてみたところ、どうやら配偶者は赴任先で仕事をしてはいけないという社則があるらしく、奥様方は毎日テニスに興じたりお茶会をしたりして楽しい毎日を送っていらっしゃるようです(ただこの幸せはオーストラリア駐在妻だからであって、中近東駐在妻は比べ物にならない程悲惨らしい)。

笑ってしまったのが、やはりオーストラリア駐在妻達の間にもまるで「白い巨塔」のような奥様権力争いが行われているらしく、私にはとうてい近寄れないものがありますねえ。

私が英語学校に通ってIELTS準備コースを勉強している頃、クラスメイトに少し年配の日本人女性がいました。
彼女もIELTS試験の準備をしているので何のためにやっているのかと聞くと、「主人の仕事でオーストラリアに来ていて、時間があるから大学でも行こうと思って・・・。」と分別のある彼女は申し訳なさそうに私達の前でそう言いました。
若い海外留学生達、大学に通いたいと必死にアルバイトしながら勉強している私達の反感を買ったことは言うまでもありません。そういうところに叩き上げとエリートの違いを感じます。

叩き上げであることに誇りを感じ、それでもちょっと駐在員に対してジェラシーな【永住権保持者・ビジネスビザ保持者のカテゴリー】。唯一駐在員になくて永住権保持者にあるものは、「オーストラリア永住」というその権利。そう、私達はオーストラリアにこれからもずっと住むことが許されているのです。駐在員の方々はいずれ任期を終えて帰国します。でも私達は残ることができる。オーストラリアなんかにいたくないから、という人にとってはどうってことない事ですが、オーストラリア生活を愛している人にとってはものすごく大切なこと。そんな大切なものを持っている自分を幸せに思う今日この頃です。

今日もルンルンのMIKAでした♪

*この記事は2006年7月に某オーストラリア日本人コミュニティサイトに掲載されたものです。

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