オーストラリア・シドニー | オーストラリア暮らし

オーストラリアトイレ事情

2023年3月24日

私の職場の英語教師が、オーストラリア人向けに日本に関してのコラムを書くことになり、第一回目のテーマとして「日本のトイレ事情」を選びました。

そんなコラム書きを引き受けるくらいなので、もちろん彼は日本経験者なのですが、いまいち「なぜウォシュレットなんてものが存在するのか」、「なぜ日本の便座は温かいのか」、「なぜトイレの水タンクのてっぺんに蛇口がついていて、トイレのフラッシュと同時に水が流れ出すようになっているのか」等など、細かいその理由を日本ネイティブに確認する必要があったらしく、当然の如く私に、日本御トイレ事情の説明役として白羽の矢が立ったのでございました。

 

私は女性なので女性用のトイレしか使用したことがありませんが、あの「音姫」という消音ボタンは男性用にも存在するのでしょうか?音姫は、私の記憶が確かであれば約15年ほど前から現れ始め、プライバシーのために音を消したいけれど、その度にいちいち水を流すのは水資源の無駄遣いにつながる、という、いかにも日本らしき考えのもとに発明されたしろもので、これを異文化圏から来た人が、使用目的の理解に苦しむのは当然のことかもしれません。

 

ウォシュレットは、今では日本の至るところで見かけることができますが、それも25年前にはまだまだ珍しく、一般化するまでは使用法にとまどった人たちもたくさんいるだろうし、はなっから必要性を見出せない人も多かったのでは、と思います。

 

こういった日本独特の「痒いところに手が届く」発明品は、いったんそれに慣れてしまうと手放すことが難しく、私も実のところウォシュレットが恋しくてたまりません。冬の朝冷たい便座に腰を下ろすよりも、適温に温められた便座に腰掛けた方がよっぽど心地良いに決まってますし、生理のときだとか、便秘の人、下痢の人、痔持ちの人なんかには、ノズルの位置や水温まで調節のできる賢いウォシュレットの存在が、多いに役に立っているはずです。

シドニーでも日本のウォシュレットを販売するビジネスがありますが、良く考えて見るとオーストラリアのバスルームというのは、便器の近くにコンセントがあるようには設計されておらず、ウォシュレットを取り付ける作業には必然的に電気工事も必要とされることになり、そこまで考えるとアパートを借りているだけの身分の私はなんだか面倒くさくなってしまうのでした。

 

オーストラリアのトイレ事情は、基本的に日本のものより質が劣ります。5つ星ホテルのトイレや、新しくできたばかりのショッピングセンターのトイレと比べたとしても、やはり日本の方がレベルは高いのはどうしても否めません。

第一に、清潔さが日本とオーストラリアでは比べ物になりません。日本はよほど頻繁に掃除を行っているだろうし、使用する人たちもマナーがしっかりしていて、それほど汚すことがないのだと思われます。

次に設備の差。大理石の壁や大きな鏡など、造りは同じレベルでも、それこそウォシュレットだとか、自動的に石鹸と水が出てくるシンクだとか、気の利いたグルーミングコーナーだとかが、オーストラリアのホテルにはまだまだ少ないです。

第三に、雰囲気作りのプレゼンテーション。日本で良しとされるトイレでは、BGMが流れていたり、香りに気を配っていたり、お花が飾ってあったりしますよね。残念ながら今のところ、オーストラリアで感動するほどの御トイレプレゼンテーションには出会ったことがございません。

 

駅にある公衆トイレなんかを比べても、基本的にはオーストラリアのものの方が汚れていたりしますが、また別の意味で日本とオーストラリアの違いが見えてくることがあります。

 

例えばシドニーのDarling Harbourにある公衆トイレには、注射器を捨てるための専用ボックスが取り付けられており、ドラッグ使用者が注射器を使いまわしたり、使用済みの針をそこらに捨てたりしないように配慮されています。これは逆に麻薬の使用を促進しているのではないかとも思われますが、中毒になっているものを無理やりに弾圧するのではなく、違法でもそれなりにマナーを守って、他の人に迷惑をかけないようにしようという試みではないでしょうか。

 

シドニーのCentral StationやEdgecliff stationなどがそうですが、公衆トイレで照明が真っ青なところがあります。この理由は私にとって未だ定かではないのですが、友人に言わせると、「血管を見難くするため」らしいです。麻薬中毒者がトイレで注射器を使えないようにするために、青い照明にして血管を探せないようにしている、との彼女の見解でしたが、果たして真相は如何に。

 

オーストラリアのトイレ事情は、日本の物よりも劣ることは間違いありませんが、それしか与えられないのであればそれに慣れざるを得ません。こちらには和式便器というのは存在しませんので、汚らしいなと思っても、洋式便座に座りますし、紙の便座シートがなくても我慢するしかありません(そういえばときどきはショッピングセンターのトイレに便座クリーナーが備え付けられていて、便座をアルコール消毒することができます)。公園やビーチのトイレなんかは、そもそも便座が無い洋式トイレがほとんどかも。あれはそういうデザインなのか、元々はあったが、取れて無くなってしまったのか、謎は深まるばかり。

音姫なんかに至っては、そんな概念がそもそもオーストラリアには存在していないようで(というかそんなことまで気を使っているのは日本人だけでしょう)、最近では音なぞあまり気にせず用を足すようになりました。

 

そういえば学校見学の際に「最後にトイレを見せてください」と言ってトイレを覗きに行き、その後入学を決めた日本人男性がいました。やはり日本人にとってはお手洗いは重要な生活の一部なんだと思います。オーストラリアの家庭では、通常バスタブとシャワーと便器が同じ空間にあるもので、日本のそれとはちょっと違う考えのもとに構成されていることを感じますよね。日本のものは、トイレだけで独立した地位を保っていて、いかにそれが重要視されているかを物語っています。

 

いつかはウォシュレットが欲しい、今日もルンルンのMiKAでした♪

 

*この記事は2007年5月に某オーストラリア日本人コミュニティサイトに掲載されたものです。

*2023年追記:その後ゴールドコーストに引っ越した私。冬でもそこそこ暖かい亜熱帯地方では、便座が温められている必要はほとんど無いことに気が付きました。ウォシュレットはアジア人には人気を博していて、日本人だけでなく、韓国人や中国人の友達の家で設置されているのを見かけることがあります。公共トイレの質は未だ変わらず、基本的に日本ほどきれいではないですが、多目的トイレ、親子で使えるファミリートイレ、おむつ替え&授乳室等の設備は、オーストラリアの方が日本よりもずっとレベルが高く、充実していると感じます。

*2023年追記②:そういえばシドニーオペラハウスのトイレはデザイン性が高くてきれいですよね。もうだいぶ古くなってはいるはずだけれど、未だに斬新なイメージがあります。

 

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Image by Michal Jarmoluk from Pixabay

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